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​理解する化学で暗記を9割減らしてみせよう

6段階の学習ステップと、各段階での学習法

1.計算トレーニング

化学の問題を解くために必要な計算は中学数学までで対応できるような内容です。しかし、速く正確に大量の計算を行えなければ高得点は狙えません。大学によってもちろん差異はありますが、入試問題での知識と計算の配点比率はおおよそ5:5です。さらに、難関大になれば、ほとんどすべての大学で試験時間に対し、分量が多い傾向にあります(詳しくは後述)。つまり、どれほど知識を身につけても、計算が遅く、下手であれば、まったく知識を活用できないのです。普段から計算トレーニングを繰り返して、計算の精度と速度を向上させていくことがとても大切です。

■学習法

学校配布の問題集(セミナー化学、リードα、センサー化学など)や、市販の問題集(らくらくマスター、基礎問題精講、重要問題集など)から、物質量や濃度の分野を徹底的に演習しましょう。セミナー化学を使用するのであれば、大問1つあたり3~5分を目安に、”時間内に”解き切れるようになるまで演習を重ねます。4月からスタートするイーズ予備校の授業の進度に合わせて、各分野の計算トレーニングをしてもらいます。

■理由

先にも述べましたが、難関大や医学部入試の化学において、試験時間に余裕のあることはほとんどありません。たとえば、難易度が標準的な筑波大学でさえ、2017年度入試では、約60分で32問の小問を解かせるものでした。やはり計算問題を素早く正確に解けることは、必須のスキルといえます

また時間を計測した演習を直前期に始める受験生は、多くの場合タイムプレッシャーへの耐性が低く、ケアレスミスが多発することになります。この理由は脳科学の観点から説明できます。時間に追われることで脳の一部は時間を意識します。すると、計算と時間の2つに注意力が分散し、計算の精度が低下することが避けられなくなるのです。これが、「ケアレスミスは実力不足だ」と言われる所以です。こういったタイムプレッシャーを克服する方法の1つは、仮に注意力が分散したとしてもミスなく計算を終えられるほどに十分な精度を鍛える。もう1つは、時間に追われないようになるまで計算の速度を鍛える。この双方を鍛えることで、少しずつケアレスミスを減らすことができます。タイムプレッシャーに打ち勝ち、精度と速度を維持できるようになるスキルは一朝一夕では身につきませんので、早期から対策を始めるべきでしょう。

■ワンポイントアドバイス:有効数字について

有効数字について、きちんと説明されていない人もいるでしょうから、ここでは有効数字について、簡単にまとめます。まず、有効数字とは、「誤差を含んではいるが、実験などの測定値として実際に意味のある桁だけ表示したもの」です。定義はなんだか難しいですね。具体例で理解してみましょう。

中和滴定の実験において、ビュレットに1mL刻みでしか目盛りがないとすると、皆さんは滴下した溶液の体積をどのように読み取るでしょうか?16mLと17mLのあいだだったら、16.4mLのように小数第1位まで読み取るはずです。少数第1位の読み取りは正確ではないので誤差を含みますが、測定値として意味はあります。しかし、さらに下の位の16.42mLなのか、それとも16.43mLなのか判断することは、測定値として大きな意味をもちませんね?この場合、測定値は16.4mLとし、有効数字は少数第1位までとすべきなのです。

次に、有効数字の桁数について考えます。

有効数字の桁数は、初めて0以外の数字になったところから数え始めます。

例)

0.01 有効数字1桁

0.010 有効数字2桁

6.27 有効数字3桁

5555 有効数字4桁

73260 有効数字5桁

 

ですので、桁数の大きい数の有効数字は小数点を使って以下のように表わします(でないと分かりません)。

3203000 → 3.203 × 10^6

 

最後に、有効数字の計算についてです。

誤差が拡大したり不要な桁が増えたりしないように、桁の切り捨てを適切に行いながら計算を進めます。四捨五入は答えを出すときに最後に行います。

例)①+②の結果を有効数字3桁で答えるように指示されている場合

① 1.881 × 1.395 = 2.623995 → 2.623

② 73.15 × 1.233 = 90.19395 → 90.19

2.623 + 90.19 = 92.453 → 92.5

 

■ワンポイントアドバイス:立式の仕方について

問題集の解説では、すべての計算を1つの式にまとめて書かれていることがあります。しかし、みなさんが計算問題を解くときには、解説と全く同じように立式をすることはオススメしません。自分の考える順番に沿って、1つずつ計算を終えていけばよいのであって、1つの式にまとめる必要はありません。


 

2.理論化学分野の現象の理解と暗記

4月からスタートする授業では、理論化学→無機化学→有機化学の順番に学習します。

理論化学分野で現象の理解を徹底的に深めることで、理論化学の暗記量はもちろん、その後の無機化学と有機化学の暗記量を激減させるカリキュラムになっています。

■学習法(理論化学)

「理解することと覚えることは明確に分ける」ことを重視して、学習を進めていきます。

みなさんは、①水への溶解性、②電気陰性度、③分子の構造、④極性という言葉を聞いて、いろいろ覚えさせられたなぁ、と思い返す人も多いでしょう。

イーズの化学は違います。これら4つは別々の項目ではなく、一連の知識として理解が出来ます。はじめに②電気陰性度をしっかりとした理解で捉えていれば、③分子の構造は予想がつきます。それにより④極性の判断、①水への溶解性の判断も可能です。

<注意:ここから数行は読み飛ばしてOK>

ここからの説明は、みなさんにとっては聞きなれない話になりますので、分からなくても気にしないでください。文章ではなかなか説明が難しいですが、イーズ予備校の講義で図解しながら分かりやすく説明する内容です。では具体的に説明していきましょう。分子の構造について、それぞれの電子対は反発により空間的に最も離れた位置に来るように配置が決まる、という性質があります。それを知っていると、メタンが正四面体形、水が折れ線形になることは自然なことだと理解できるのです(メタンはC - H結合の4つの共有電子対が、正四面体の頂点方向を向くことは理解して頂けると思いますが、実は水の場合も同じです。O - H結合の2つの共有電子対と、O原子の2つの非共有電子対がそれぞれ正四面体の頂点方向に配列されることで、折れ線形となるのです)。分子の構造から極性(分子全体でみたときの電気の偏り)が大きいと判断されれば、水への溶解性も大きいと、繋げて考えることができます。

<読み飛ばしはここまで>

このようにイーズの化学では、②電気陰性度は暗記すること、③分子の構造、④極性、①水への溶解性の3つは覚えたことから派生して理解することと考えているので暗記の量を大きく減らすことができます。※実は電気陰性度も理解して対応することも出来ます※

その他にも、反応の現象の理解(弱酸の遊離反応はなぜ起こるか)などができるよう、反応や言葉の定義まで戻って要点を確認していきます。どこまで覚えて、どこから先は理解すべきなのか、イーズの授業でお伝えします。

■学習法(無機化学・有機化学)

・有機化学のマルコフニコフ則

C - C二重結合に付加反応が起こる際に使用する経験則ですが、これは電気陰性度を使って理解することができます。

・銅と希硝酸の反応式

酸化還元反応だということ、銅と希硝酸の酸化還元による物質の変化さえ覚えていれば、それぞれの半反応式を組み合わせて反応式を完成させることができます。

よって、銅と希硝酸の化学反応式は丸暗記する必要がなくなります。

・有機化合物の分離

酸塩基の強弱や弱酸・弱塩基の遊離の現象を理解することで、自然とどのように物質が分離できるかを考えることができるようになります。

このように、無機化学や有機化学の暗記事項は、理論化学の酸塩基、酸化還元、平衡などの分野が理解できていることで、暗記量を一気に減らすことが可能なのです。そのため、授業を通して理論化学分野の現象の理解と暗記がとても重要になってくるのです。



 

3.無機化学・有機化学の暗記

暗記の量が減らせると言っても、やはり必要最低限の暗記はあります。無機化学の沈殿、有機化学の反応などが該当します。こういった暗記をいかに効率よく進められるかも、非常に重要です。

■学習法

無機化学、有機化学の暗記を効率化するための勉強法は2つ。

 

1つめは、反応の流れを理解してもらうことと、視覚的に覚えることです。

無機化学分野において沈殿や溶液の色を覚えなければいけませんが、文字情報をまるごと暗記するよりも、資料集で実際に色を確認しながら覚える方が記憶に残りやすいです。授業では、身近な物質でイメージを伝えることも行っています。また、有機化学においてはさまざまな物質を覚えますが、一連の反応の中で物質を覚えることで記憶の定着度合いが変わってきます。

2つめは、情報を一箇所に集約させることです。無機化学・有機化学分野では、資料集に学んだ情報のすべてをまとめることを推奨しています。講義で聞いたこと、問題集を解いて納得したことなど、理解・暗記の助けになりそうなことをまとめていきます。

■理由

脳科学の世界では、丸暗記では長期記憶が作れない、作れたとしても多くの手間と時間を要すると言われています。それに対して、ストーリー記憶(知識を繋げて記憶するやり方)では、長期記憶を素早く作り上げることが可能とされています。これが1つ目の勉強法の理由です。

 

さて、いくらストーリー記憶を構築したとは言え、まったく復習しなければ、いずれは忘れてしまう可能性があります。長期記憶を確実に形成するためには、インプットの頻度を上げることも非常に重要です。つまり、何度も何度も知識を確認しましょう、ということですね。とは言え、入試は限られた時間の中での勝負であり、もちろん復習に使える時間は限られていますから、インプットの頻度を上げるためにも復習のしやすさが非常に重要になります。その復習のしやすさを向上させる仕組みが、2つ目の勉強法で紹介した情報の集約化です。ただし、情報の集約化をノートで行うことはオススメできません。1つは、索引機能がノートにはないので、復習の効率を下げる要因になりためです。2つめは、知識を漏れなくまとめたノートを自分で作るとなると、膨大な労力が必要になりますので、限られた貴重な時間を浪費しうるからです。



 

4.問題演習

授業内で問題演習も行います。授業で理解した内容をどのように使って問題を解いていくのか、その考え方を吸収しましょう。典型的な問題から抜粋しますので、後の入試演習で似たような問題と出あうことも少なくありません。授業で扱った問題は、完璧に解き切れるまで復習をしましょう。

■問題パターンの整理

単純な語句の穴埋めや計算のみで解けない問題も存在します。そのような問題は、出題パターンが決まっているものが非常に多いため、典型的な問題の解法(発想)は覚えておくべきです。たとえば、

・揮発性分子の分子量測定

・液体として存在している物質がある場合の蒸気圧計算

・二段階中和

・緩衝液のpH

・加水分解時の溶液のpH

・CODの計算

などが挙げられます。自主学習で進める場合は、重要問題集(数研出版)がオススメです。

■時間感覚を身につける

先にも書きましたが、化学の入試問題(特に二次試験)においては時間制限が非常に厳しい大学も存在します。そのため秋以降の演習では、時間制限を設けながら解いていくことが求められます。毎回の演習時に時間を計測し、問題集に計測した時間を記入していきましょう。同一の問題を複数回にわたって演習するときは、その都度時間を測り記載して下さい。春から夏にかけての基本問題演習においては制限時間を設ける必要なありませんが、かかった時間は確認し記録しておくとよいです。なぜなら、解答する時間が短縮されていく過程を確認することで、モチベーション維持に繋がるからです。

■実力をつける自主学習のやり方

大切なことは、以下の4つです。

①わからなかった選択肢については、全て調べあげる。◯か✕だけで終わりにしないこと。

②授業で習った解き方を実践する。問題集の解説のやり方でやる必要はありません。

<問題集の解答はスッキリと見せるために、わざとわかりづらい形で立式していることが多いためです。>

③解けなかった問題はすぐに解決する。イーズの先生に聞きましょう。

<知らない知識に出会ったら、どこまで覚えるべきなのかどこから先は理解すべきなのかを自分で判断するのは難しいことです。そのため、イーズの先生に積極的に質問し、一つ一つ覚えていきましょう。>

④復習する日付は問題集に記入する。

<解けた問題であれば3ヶ月後の日付、解けなかった問題であれば1週間後の日付というように復習する日付を書き込んでおきましょう。>



 

5.論述力トレーニング

論述が必要な大学を受験する場合には、入試演習を通して、論述問題の対策も進めます。

少ない字数の論述問題であっても、要点を押さえておかなければ得点になる解答を書くことはできません。一度同じような問題を解いておくだけで、試験時間内に解答を作りやすくなります。

 

■学習法

授業内問題演習、入試問題演習を行う中で論述問題の対策を行います。論述対策は要点の整理が中心です。たとえば、二酸化炭素と水に極性はあるかどうかを説明せよ、という問題。分子の極性は、①結合の極性、②分子の形状という2つの要素によって決まっている、ということが理解できていることが、論述の要点になります。これを理解しておくだけで、初見の問題にも対応することが可能です。

また、授業の解説を聞く前に、自分の表現で一度解答を作り上げてから授業に臨みましょう。わからないなりでもよいので自分の文章をつくると、文章の繋ぎ方や表現方法に関して、自分の疑問点が浮かび上がります。その上で模範解答と比較することによって、表現力を養うことができます。



 

6.推論トレーニング

東大、京大、阪大などを受験する場合には、推論のトレーニングを行います。推論といってもさまざまですが、有機化学の構造決定問題も推論の一種です。難関大の問題では、見たことがない反応の結果を予想しなければならない問題が出題されることがあります。

◾︎学習法

反応の組み合わせは無限にあるので、全て覚えることは不可能です。そのため、普段の学習時から反応の流れを深く理解することが対策につながります。知らない物資が出題された際に、深い理解をしていれば、一つの知識を応用して、物質の性質を予想できるので、問題を解くことができるようになります。

各クラス内容 ※カリキュラムは目安です

クラス内容

化学 ハイクラス

□カリキュラム

4月〜8月:週2で入試標準レベル問題演習・解説
9月〜2月:入試問題演習(発展)

□レベル

・進研模試で偏差値60以上の子
・知識を忘れていても、予習の段階で必要な知識を確認して思い出せる子
・授業で扱った問題のとらえ方を自習で定着させられる子(復習ができる子)

□指導方針

入試でのスピード・得点力を養うため、授業では、弱点補強のための自習指示、時間配分や問題の取捨選択の仕方などを一人一人の状況に合わせてフィードバック。
理論分野においては、周期表や電気陰性度とできるだけ絡めて用語の定義を再確認することで、単純暗記にならず、忘れにくくもなる。その上で、参考書等での自習ではバラバラになりがちな知識を体系化させる。覚えたものは自力で説明できるかどうかを発問にて確認。
無機・有機分野は、酸塩基や酸化還元の知識から理解させ、暗記事項を減らしている。実践できているかどうかは演習時に答案を直接見て確認している。

化学 スタンダードクラス

□カリキュラム

4月〜7月:理論
8月〜10月:有機&高分子
11月〜入試演習

□レベル

・教科書は自力で理解できるが、抜けや理解不足がある子
・共通テストで60点~80点の子

□指導方針

このクラスの子たちは、基礎はわかっていることが多いが、理解が不十分で応用問題ではよく間違う。朝テストを利用し、事前に苦手分野を把握しつつ、授業での講義(導入)の内容を調整している。理解している内容は、そこで反復となり定着させていく。理解していない内容については、しっかり理解できているかを授業内で発問させ、確認しながら演習へと進める。
応用レベルの定着度合いは、単元ごとに小テストを実施して、添削して返却。定着が不十分な場合はここに合わせて自習指示をする。

化学 ベーシッククラス

□カリキュラム

4月〜7月:理論(無機も動画で同時進行)
8月〜10月:有機&高分子
11月〜入試演習

□レベル

・化学を1からやり直す人

□指導方針

すべてにおいて基礎から確認するため、暗記事項であっても高校範囲で説明できる限り、理由を説明し生徒の理解度を確認しながら、単純暗記ではなく理解型暗記にして思い出しやすくしている。加えて、頭の中で現象を思い浮かべながら公式の意味を説明できる状態になったのを確認してから演習に入る。
授業での問題解説では実験操作などなるべく図を使って状況を整理するようにしている。解くときにその図のような状態を想像しながら解き、現象と公式を結びつけながら解けるようになることが目的。

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